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コラム

【本編一部公開】コロナに勝つ心 賢人たちからのメッセージ

近年の見えない脅威から何を学び、どう生きるか。少しでも考えるきっかけにこの本がなればと思います。
興味を持ってもらい、この本を手に取っていただければと思い、
ブログでも本作の冒頭を少しだけ公開します。

 


はじめに

春の日差しに包まれて、穏やかな風を感じながらの出社途中、ふと見ると、犬の散歩をする一人の老翁がいた。犬は柴犬で、ころころと太った背中を伸ばしたかと思うと、プルプルと首を振って心地よさげに天を見た。どこかで見慣れた風景だ。去年の十二月、そして今年の二月、立て続けに天に召された父親と愛犬ココの姿にそっくりだった。
信号が青に変わってからも、込みあげてくる懐かしさと深い悲しみに心は激しく動揺し、先ほどまでの麗春の穏やかさが逆に心の渇きを際立たせるようだった。
毎日毎朝、当たり前のようにそこに居た父とココが今はいない。どれだけ祈ってもどんな手を使っても、もうそこには居てくれない。
人生にはどうしようもないことがいくつかあり、みずからの生老病死もそのひとつだが、愛する人との惜別は考えただけでも息苦しくなるような試練である。

 

生前の父やココの姿を見ていて「いつまでもこの幸せな時間は続かないんだ」と、いたずらに心を曇らせてしまったことが幾度かあった。そしてそれは、さほどの時間を経ずして現実となった。
すると、今一緒に暮らしている人たちが無性に愛おしくなってくる。人の一生は短いが、多くの思い出や先人たちの教えに安らぎと潤いを感じることができる。これは、先立った人たちが遺してくれた財産なのかもしれない。
こうしたことを、生涯において一度は冷静に考えてみる必要があるのだろう。
つまり、限りある時間と別離の繰り返しともいえる人生は、私たちにいったいなにをもたらそうとしているのか。あるいは、私たちはそこからなにを学べばよいのか、ということである。

 

この「人生の構図」には、大きな意図があるに違いない。
もしかしたら人は、生きている間に毎日その命題に取り組んでいるのかもしれない。そのことに、どれだけ意識を集中するのかというだけの問題なのだ。大切なのは、答えがすぐあるかどうかではなく、解を求め、考えながら今を生きていくことなのではなかろうか。

 

ともすれば、つらいことや考えたくないことは置き去りにされるのが人の世の常、人の情たるものだ。もちろん、楽しく生きるのも人生の目的ではあるし、人はそうあるべきだ。
しかし、真から人生を楽しむためには、苦しいことから目をそらしたり、忙殺されたりしてはいけない。そこには真理がある。そのことを意識し、感じながら今世の道を歩んでいくことこそが、なにより人々に求められている生き方だと感じている。
ただし、これは「宗教」とか「哲学」とか「道徳」とかそういったものとは少し違っている。どう表現すればいいのかは難しいところなのだが、語っていくなかから、読者の方がそれぞれに感じ取っていただけたらそれで十分である。
本書に連ねたのは、私自身の思い、あるいは気づきから発する言葉であり、また示唆を与えてくれた多くの秀逸なる書物からの抜粋である。これらを通して「大いなる意図」を考えるよすがになれば著者として幸甚である。


 

…続きは本作でお楽しみください。